『ピーター・ドイグ展 』東京国立近代美術館

ドイグの制作方法は、写真・広告・映画等の既存イメージを自身の記憶と組み合わせて、心象風景を画面に生み出すというもの。情報化社会に暮らす私たちの視覚経路のようだと思った。 写実的リアリティとコンテキストを取り去った風景は、私的で夢のような非現…

『背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和展』練馬区立美術館

私は、青楓のことは浅井忠と共に、洋画家としてよりも図案家として注目していた。この回顧展で幅広い画業を総覧してもやっぱり、図案・装丁が一番良かった。感覚的な線とフラットな面、日本的な色彩と装飾的な構図。こういった作風に無条件に惹かれる。それ…

『ヤコポ バボーニ スキリンジ展』CHANELネクサスホール

人体に直接楽譜を描く、ヤコポ独自の作曲法。骨格や筋肉の凹凸が旋律を導く。楽譜に基づく音楽というのは、まず初めに作曲家の存在があり、次に演奏家の解釈と再現があり、三次的に聴衆に委ねられる、という階層が当たり前かと思っていた。ヤコポの作曲法は…

『ART NAGOYA』 ホテルナゴヤキャッスル

ホテル型アートフェア。会場は9階客室。名古屋城ビューに観光気分が上がった。遠目にも金シャチは輝いていた。 池田杏莉さんの作品が欲しかった。 大の字で天を仰ぐ犬っぽい子。おなかぽっこり、満足気。鼻が光るというのがサンタの相棒のトナカイみたい。電…

『ハマスホイとデンマーク絵画』東京都美術館

ハマスホイの作品をまとめて見られるこの機会、ずいぶん前から楽しみにしていた。 やわらかな陽光の差す静かな室内画の数々。ハーフトーンの色味と、薄塗りで几帳面な筆致が美しかった。『寝室』が特に好きだった。 奇妙な作風だなぁと思う。 穏やかだけれど…

『第68回 東京藝術大学卒業・修了作品展』東京藝術大学、東京都美術館

『廻転する不在』東弘一郎さん/先端芸術表現 建築っぽいけど、自転車。進んでないけど、自転車。 時々ベルを鳴らしてくれるのが可笑しかった。『フグスリバコ』 鷲見茜さん/陶芸 フグの毒が抜けて薬箱になるというストーリー 『岸水寄せる』竹野優美さん/…

『無形にふれる』POLAミュージアムアネックス

伝統工芸、伝統芸能、民俗芸能の体験型展示。 能と京舞の「型」の紹介は、等身大パネルに動きとその意味が解説されていた。手話みたいだと思った。 日本伝統文化の「型」というのは、テキスト集なのだと思う。型をなぞる目的は、ノウハウの習得や伝承だけで…

『所蔵作品展 パッション20 今みておきたい工芸の想い』東京国立近代美術館工芸館

コンパクトな会場だけれど、資料も作品も情報密度が高くてとても疲れた。そして自分の勉強不足をひしひしと感じた(毎回言ってる)。 工芸と民芸、工芸と工業、工芸と美術、伝統と伝承、彫刻と工芸、デザインと美術、装飾と美術、Artと美術。そのボーダーと…

『窓展:窓をめぐるアートと建築の旅』東京国立近代美術館

「窓」という記号を通して、世界を眺める企画展。窓が象徴するもの、窓の役割、窓に込められた暗喩、窓の機能…。様々な切り口で窓を観察することで、物事の多様な側面が浮かび上がる。 『窓に住む家/窓のない家』藤本壮介 この作品の出現によって「外」に「…

『「記憶の珍味」諏訪綾子展』資生堂ギャラリー

食を媒体として“記憶を呼び起こす”体験型展示。嗅覚から体感する作品と、味覚から体感する作品があった。 味覚のほうは90分待ちだったので参加せず。嗅覚のほうは、オブジェを選んで香りを嗅ぎ、いわゆるプルースト効果で引き出される個人的記憶をあじわうと…

『伝説の面打たち』東京国立博物館本館 特集

『近江女』。わずかに非対称に作られた面。様々な角度から観察してみた。 不気味に表情が変わる。 表情筋をよく観察した上で、引き算を重ねてデフォルメされた顔。演者の表現力と観る者の想像力を無限にする工夫。表面的なリアリティの追求はむしろ限界を作…

『人、神、自然 ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界』東京国立博物館東洋館 特別展

再訪。瞳孔かっぴらいた浮彫が他人に思えない。(↑左列、白いの) 人物や動物を模った造形は、中央アメリカ産とアフリカ産がユーモラスで可愛かった。日本がマンガ&キャラクター大国となった原点を鳥獣戯画にみるならば、中央アメリカとアフリカもゆるキャラ…

『保科豊巳退任記念展「萃点」SUI-TEN』東京藝術大学美術館

*萃点……熊楠の造語で“さまざまなものが集まる場所”の意。 油画で25年も教鞭を執られた保科氏の回顧展。 スタイルに激しい変遷がみられないのは、社会背景が変化しても変わらないものにテーマを置いているからかなと思った。東洋的な世界観を感じた。 『雨の…

『連獅子』歌舞伎座

幕見で立ち見。THE・KABUKIな演目、連獅子!天井桟敷のオペラグラス越しでも一度観てみたかった。ダイナミックな毛振り、キビキビした動き、二人揃ってバシッとキマる!かっこいい!あれだけ振りまくれば遠心力もかかるだろうから、振ることよりも静止するこ…

2019年 みたもの

企画展21本、常設展4本、あとギャラリーとかちょこまか色々。 感激したのは『竹内浩一の世界展』。肉筆の絵肌は圧倒的に素晴らしかった。動物たちが霊的に美しく神の使いのようだった。 じっくり観たのは『ルーベンス展』と『奇想の系譜展』。久々に行った国…