『ヤコポ バボーニ スキリンジ展』CHANELネクサスホール
人体に直接楽譜を描く、ヤコポ独自の作曲法。骨格や筋肉の凹凸が旋律を導く。
楽譜に基づく音楽というのは、まず初めに作曲家の存在があり、次に演奏家の解釈と再現があり、三次的に聴衆に委ねられる、という階層が当たり前かと思っていた。
ヤコポの作曲法は初めから他者の直接的介入があり、再現演奏型の音楽なのに、即興のようなプロセスなのが驚きだった。
カリグラフィーも学んだ方だそうで、筆跡が美しい。
人体に描かれた楽譜を眺めて、そうか音楽というのは常に体を伴うんだな、と思った。
脈打つ体もリズム楽器だ。
楽譜は楽曲を視覚化する大発明であるけれど、音楽のありようまで著すには不完全なもので、厳密にはそこに完結させることができない。だからこそ、あらゆる水準で他者の協働を必要とするのだと思う。音楽の真髄は人々を結ぶことであるといわれるけれど、その意味が少しわかったような気がした。
音楽に詳しくない私にも伝わるくらい、音楽への愛に溢れた作品でした。